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神戸地方裁判所 昭和50年(ワ)455号 判決 1978年10月27日

主文

被告山本恵子は原告らに対し、別紙(一)目録記載一の建物の五階から屋上へ通ずる階段部分に存する木柵を収去し、原告らが右屋上へ通行するのを妨げてはならない。

原告らのその余の請求はいずれも棄却する。

訴訟費用は一〇分し、その一を被告山本恵子の負担とし、その余を原告らの連帯負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告ら

1. 被告会社は、原告らに対し、別紙(一)目録記載一の建物(以下本件建物という)のうち同二の車庫(以下本件車庫という)について神戸地方法務局昭和四〇年一二月二〇日受付第九一二〇号の所有権保存登記の抹消登記手続をなし、本件車庫を明渡し、昭和五〇年五月三一日から右明渡済みまで、一カ月について別紙(三)一覧表請求金額欄記載の各割合による金員を支払え。

2. 被告高梨は、原告らに対し、本件車庫のうち別紙(二)図面記載のA部分(以下単に本件車庫のA部分などという)を明渡し、前同日から明渡済みまで、一カ月について別紙(三)一覧表請求金額欄記載の各割合による金員を支払え。

3. 被告山本孝典は、原告らに対し、本件車庫のB部分を明渡し、前同日から明渡済みまで、一カ月について別紙(三)一覧表請求金額欄記載の各割合による金員を支払え。

4. 被告山本弘二は、原告らに対し、本件車庫のC部分を明渡し、前同日から明渡済みまで、一カ月について別紙(三)一覧表請求金額欄記載の各割合による金員を支払え。

5. 被告山本恵子は、原告らが本件建物の屋上へ通行することを妨げてはならず、右建物の五階から屋上へ通ずる階段部分に存する木柵を収去せよ。

6. 訴訟費用は被告らの負担とする。

7. 1ないし4項の金員支払についての仮執行の宣言。

二、被告ら

1. 原告らの請求を棄却する。

2. 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二、請求の原因

一、被告会社は本件建物を建築し、原告らに(原告岡本毅一はその妻と共同で、同人の持分八分の五)、別紙(三)一覧表区分建物欄記載の各区分建物を売渡し、その各区分建物の床面積の本件建物の専有部分の全床面積(一一四九・六六平方米)に対する割合は、同表持分割合欄記載のとおりである。

二、本件車庫は右区分建物と共に原告らに売渡された。

三、本件車庫は、次の理由により、構造上及び利用上の独立性をいずれも備えておらず、建物の区分所有等に関する法律(以下単に法という)三条一項所定の構造上区分所有者全員の共用に供さるべき建物部分所謂法定共用部分である。

1. 本件建物建築当初の本件車庫は、地下一階部分に存在し、東側一箇所と北側部分二箇所に自動車の出入口がありシヤツターが設けられており、外に人の出入口が二箇所あり半開の扉が設けられていたが、いずれも自由に出入りできる状態であり、構造上の独立性はなかつた。

2. 本件車庫の天井には水道給水管、雑用排水管などが張りめぐらされ、その床下には、岡本マンシヨンの区分所有者全員の共有に属するし尿浄化槽と受水槽が設置され、それらの監視清掃などのためのマンホールが数個その床面に設けられており、し尿浄化槽と受水槽の維持管理のためには、本件車庫に立入つて作業せねばならず、本件車庫は利用上の独立性を欠いている。

3. なお、本件車庫のC部分は当初は車庫としてではなく、本件建物の区分所有者全員のための集会室として利用されていた。

四、ところが、被告会社は、本件車庫について、被告会社の専有部分として、原告らの求めた裁判1記載の所有権保存登記をし、本件車庫の一部をA・B・Cの三部分に区分し、A部分を被告高梨に、B部分を被告山本孝典に、C部分を山本弘二にそれぞれ賃貸し、その余の部分を車庫として利用して、本件車庫を占有し、被告高梨は右A部分を、被告山本孝典はB部分を、被告山本弘二はC部分を、それぞれ店舗として利用して占有している。

五、本件車庫の賃料相当額の損害金額は、一カ月につき、A部分が四万九〇〇〇円、B部分が三万円、C部分が四万円である。

六、被告山本恵子は、本件建物の五階から屋上へ通ずる階段に木柵を設けるなどして、原告らが屋上へ通行するのを妨げている。

七、しかし、右屋上が性質上・構造上の法定共用部分であることは明らかである。

八、そこで、原告らは、本件車庫と屋上の共有持分権に基づき、被告会社に対し、本件車庫の前記所有権保存登記の抹消登記手続、本件車庫の明渡し及び訴状送達の翌日の昭和五〇年三月三一日から右明渡済みまで一カ月について、本件車庫のA・B・C部分の賃料相当額の合計一一万九〇〇〇円を原告らの持分割合で按分した別紙(三)一覧表請求金額欄記載の各割合による賃料相当額の損害金の支払いを、(2)被告高梨に対し、本件車庫のA部分の明渡しと同日から右明渡済みまで一カ月についてその賃料相当額の四万九〇〇〇円を原告らの持分割合で按分した同欄記載の各割合による賃料相当額の損害金の支払いを、(3)被告山本孝典に対し、同B部分の明渡しと同日から右明渡済みまで一カ月についてその賃料相当額の三万円を原告らの持分割合で按分した同欄記載の各割合による賃料相当額の損害金の支払いを、(4)被告山本弘二に対し、同C部分の明渡しと同日から右明渡済みまで一カ月についてその賃料相当額の四万円を原告らの持分割合で按分した同欄記載の各割合による賃料相当額の損害金の支払いを、(5)被告山本恵子に対して、本件建物の屋上へ通行するこの妨害禁止と五階から屋上へ通ずる部分の木柵の収去を、それぞれ求める。

第三、請求原因に対する被告会社、同山本弘二、同山本恵子の認否一項の事実は認める。

一項の事実は認める。

二項の事実を否認する。

三項の事実も否認する。本件車庫は、次の理由により、構造上も利用上も独立性があり、区分所有の対象となる。

1. 本件車庫は当初、出入口が東側に一カ所設けられスチール製シヤツターが備えられてい以外はコンクリート壁で外部と遮断されており、構造上も利用上も完全に独立していた。

2. その後、本件車庫を一部改造し、C部分に集会室を設けたことがあつたが、その集会室も原告ら本件建物の区分所有者全員のためではなく、被告会社の施設としてであつた。更に、その後、A・B・Cの部分が店舗に改造されたが、それらの改造によつて、本件車庫の独立性は損われなかつた。

3. 本件車庫の天井に数個の配管類が存在するが、これによつて本件車庫の独立性は損われない。

4. 本件車庫の床下にし尿浄化槽と受水槽が存在し、その床面に数個のマンホールが設けられていることは認める。しかし、それらの維持管理のために本件車庫に立入る必要性は、年に数回程度のものであり、それらの設備の存在によつて、本件車庫の構造上、利用上の独立性が損われることはない。右立入の必要性は法五条二項所定の使用請求権で充分である。

四項の事実は、本件車庫のA・B・C部分の位置関係を除き、外は認める。A・B・C部分に関する別紙(二)図面は正確ではない。

五項の事実を否認する。

六項の事実中、木柵を設けていることのみ認め、その余は否認する。

七項の事実を否認する。本件建物の六階には被告会社所有の区分建物が存在し、原告ら主張する所謂屋上は、六階の区分建物のバルコニーと同視すべきもので、法定共用部分ではない。

第四、請求原因に対する被告高梨、同山本孝典の認否

一項の事実を認める。

二項の事実を否認する。

三項の事実を否認する。本件車庫は構造上も利用上も独立性があり、区分所有の対象となる。その理由は第三の被告会社らの主張と同じである。

四項の事実中、被告高梨が本件車庫のA部分を、被告山本孝典がB部分を占有していることは認める。

五項の事実中、本件車庫A・B部分の賃料相当額は認める。

第五、被告会社、同山本弘二、同山本恵子の抗弁

原告らのほとんどは、被告会社が本件車庫を店舗などに改造し被告高梨らに賃借した後に、それを異議なく承認し、本件車庫が共用部分と考えないで、各区分建物を買受けたもので、単に、被告会社取締役の山本勝が本件建物の地代の値上げ要求をしたことに対する対抗手段として、本訴請求に至つたのだから、原告の本訴請求は権利の濫用である。

第六、被告高梨、同山本孝典の抗弁

一、仮に、本件車庫のA・B部分が区分所有の対象とならず、法定共用部分であるとしても、本件建物の共用部分の管理権限のある、岡本マンシヨン管理組合理事長であつた被告山本恵子から、被告高梨がA部分を、被告山本孝典がB部分を賃借したもので、A・B部分を賃借利用することについて本訴提起に至るまで、何らの異議もなかつたから、被告山本恵子にA・B部分賃貸の権限がなかつたとしても、被告高梨と被告山本孝典には、被告山本恵子にその権限があると信ずるについて正当な事由があつた。

二、本件訴訟は、原告らと被告会社との間で、本件車庫の賃料収益の帰属をめぐつて生じたもので、その帰属さえ確定すれば、被告らの目的は達せられるから、原告らの被告高梨と被告山本孝典に対するA・B部分の明渡し請求は、権利の濫用であつて許されない。

第七、抗弁に対する認否

各抗弁事実を否認する。なお、被告高梨らの抗弁一について、被告高梨と同山本孝典はA・B部分の賃貸借を被告会社と結んでおり、被告山本恵子とは結んでいない。

第八、証拠関係(省略)

別紙(一)

目録

一、一棟の建物の表示

神戸市東灘区岡本一丁目五一番三・五二番三

鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付六階建

地階 二五四・八一平方米

一階 二一五・七四平方米

二階 二一五・七四平方米

三階 二一五・七四平方米

四階 二一五・七四平方米

五階 一九五・五八平方米

六階 五六・〇一平方米

二、区分した建物の表示

家屋番号岡本一丁目五一番三の八

車庫 鉄筋コンクリート造一階建 地下一階

一三一・六一平方米

別紙(二)

<省略>

本件車庫――イロワハニホヘトチリヌルイの各点を順次結んだ線で囲まれた部分

A部分――ホヘトチワホの各点を順次結んだ直線で囲まれた部分

B部分――オリヌルオの各点を順次結んだ直線で囲まれた部分

C部分――イロオルイの各点を順次結んだ直線で囲まれた部分

別紙(三)

<省略>

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